Second part

A blendsとは…?

「国・人・文化・トレンド・カラー・素材・アイテムを、 フィーリングやタイミングで程よくBLENDした集合体の(A=AND)融和」をコンセプトとし、40代から50代のかっこいいおじさん──「イケおじ」のリアルを、三宅敬が考える「今着たいモノ」「これから着たいモノ」「この先ずっと着たいモノ」をメインアイテムに提案するファッションブランド。

おじさんのお洒落は、
原則として2色程度に抑えるべき!

種市:僕がファッションにおいて、信条としている一つに「プラスマイナスゼロ」っていうのがあるんです。最後がゼロになれば、これでOK。服屋さんって、習性として最後はかけ算にしたり足し算にしたりしがちなんです。「これで出来上がりですよ!」「お洒落じゃないですか!」なんて風に。そりゃあプロなんだからそれはそれで正解なんだけど、僕はその人の顔やら、日焼け具合、髭のあるなし、ひいてはその人の職業やらをトータルバランスで考えたうえで、「服屋だったら似合わないけど、医者だったらこの感じも悪くないかも…?」みたいな発想から相手のコーデを決めるんです。
たとえば、トムブラウンの高級スーツをギョーカイの人が着ていたら、少々やりすぎ、トゥーマッチだけど、お医者さんでサッと着こなすのはアリじゃん……と。

三宅:良い意味での「裏切り」だよね。

種市:そう。裏切っても最終的にプラマイゼロになればいいわけだから。デニムだって、サイジングさえピッタリならユニクロでも平気。ただ、全身ユニクロで揃えちゃうとつまらないから、ポイントを一つだけつくろう……とか。
じつは、僕のこうしたコーデって、誰にでも簡単にできるんです。カーキ色をメインにして、レザーに一つだけ黒を入れる。そんななかで、素材を革モノにしたり夏ならスイングトップにしたり……。
原則として、おじさんは2色程度に抑えるべき。あんまりごちゃごちゃにしないほうがいい。グレー・グレーにして、ちょっと足りないな……と感じたらストールなどの巻物で差し色を入れる。夏場だったら手ぬぐいをサッと巻くだけでガラッと印象も変わってくる。

──それって、「一点豪華主義」ってヤツ?

種市:う〜ん……似ているようで違うかも。だって僕、腕時計つけてないですからね。“豪華”である必要はない。ホンの些細な“違和感”を演出できればいいんです。たとえば、このサングラスとか……(と、今年57歳になるインタビュアーにいきなり種市さんが持参したサングラスをかけさせる)。
お、似合うじゃないですか! けっこう派手なフォルムだから逆に枯れとマッチする。(インタビュアーが付けていた腕時計を見て)このロレックスのエクスプローラーもナチュラルだから、心もち袖をまくってチラ見せしましょう。コレね、服屋が付けたら嫌味になっちゃうんですよ。また、若い人はロレックスを付けてもそこにカルチャーがまだないから似合わない。

三宅:(まんざらでもない様子のインタビュアーに向かって)なに顔つくってんだよ(笑)。

種市:ここ数年のトレンドって「一般の方」なんですよ。モデルじゃない人がモデルをやる。パリコレあたりでも、それこそライターさんだとか大工さんだとかがバリバリの洋服を着て……その生々しさがリアリティになって、無茶苦茶かっこいい。

三宅:(インタビュアーの肩をポンと叩きながら)んじゃ、これから種サンに洋服選んでもらって、一緒に外で撮影しようよ。企画変更!

──え! マジすか!?

種市:ん〜。あえてプラマイとか無視して、ガッツリカラフルに盛っちゃおっか。「還暦近くのかなり枯れている感」を活かして(笑)……ね?

急遽インタビューは中断──いきなり三宅敬withインタビュアーのコラボ撮影会スタート

──いや〜、この年になってまったく別人に生まれ変わったような気分を満喫させていただけました。どうもありがとうございます! ところで、種市さんは「男のファッション」と「女性ウケ」との関係は、どうお考えなのでしょう?

種市:僕のコーデは、どちらかと言えば「女性ウケ」じゃなく「男ウケ」……なのかも? だって、「女性ウケ」に徹してしまえば、EXILEやジャニーズ、もしくは無難すぎてただのノームコアっぽくなっちゃいますから(笑)。
男同士で「あのヒト、頑張ってるよな…」ってより、「アイツ、カッコイイよな…」と憧れてもらえるファッションを目指しています。生き様がちゃんと外にただよっている人はなにを着てもかっこいい。「なにを着てもかっこいい」んだったら、洋服なんてどうだっていいじゃん……ってことにもなるんですけど、そういう人っていうのは、いかにもファッションには興味なさそうなタイプでも、洋服の使い方をしっかりと潜在化で理解している。
そして、男の人にモテる男は間違いなく女の人にもモテる。お洒落しすぎたらダメ、イコール「モテようとしすぎちゃいけない」わけです。

──まだ、煩悩を捨て去る境地にまでは達していない我々50代のおじさんにとって、非常に耳が痛いお言葉です……。

三宅:今、多くのおじさんたちは迷走している。バブルの時代を過ごしてきて、イイ物を身に着けまくって盛り盛りにしていたころから“シンプル”へと、「削ぎ落とすこと」がトレンドになっちゃって……。にもかかわらず、若者のそういう感性を全面的に取り入れることもできず、ついつい盛るほうに走ってしまう自分もいて……さじ加減がわからなくなっているんじゃないかな?

種市:たしかに、今の50代って、けっこう難しいところにいると思う。だけど、僕は自分が50代になるのがとても楽しみだったりする。もっともっと枯れていったほうが(加齢への)虚しさよりも面白さのほうが勝る気がするんです。ロバート・デ・ニーロだとかクリント・イーストウッドみたいに……。

三宅:俺はさ、「枯れる」ってプロセスには2パターンあると考えている。たとえば、テリー伊藤さんのようにひたすら派手になっていくパターン。もう一つは坂本龍一さんのように黒と白しか着ないパターン。スティーブン・ジョブスもそうだったし……

種市:ですよね。それって若い子たちには逆立ちしたって真似できない。人は顔に年輪、これまでの人生が滲み出るじゃないですか。年輪がなきゃ両極端には寄れないんです。
テリー(伊藤)さんは、おそらく洋服が死ぬほど好きで、いろんなモノを着てきたから、ああいう派手なコーデもきちんとまとめることができるし、坂本(龍一)さんも(洋服が)好きだから、試行錯誤のすえ極限の引き算ができるようになった。

三宅:僕がまだ長髪でサーフィンしているころ、種サンから「アニキ、(白髪)は染めないほうがいいっすよ」って言われて……それがきっかけで俺も白髪のまんまにしている。

種市:「三宿のリチャードギア」ですから(笑)。でも、白髪は誰もが似合うわけじゃない。白髪が貧乏臭くなってしまうヒトも確実にいるわけで、そういうヒトは染めればいい。「白髪なヒトがお洒落」なわけじゃなく、「自分の持ち味とファッションとのバランスがわかっているヒトがお洒落」なんです。

別に『A BLENDS』の洋服を
着てもらわなくてもかまわない

──種市さんは、三宅さんのブランド『A BLENDS』と今後どのように関わっていくおつもりなんですか?

種市:野球だって、最初は憧れの選手の模倣から始まるでしょ? だけど、やっているうちにだんだん、その“お手本”が合わないケースだって出てくるわけじゃないですか。長距離打者タイプじゃないのにトップバランスの重たいバットをぶんぶん振り回したり……。こうした違和感を理解するという意味での模倣、試行錯誤の時期って、やっぱり重要なんですよ。その入り口として、たとえば「50代の新しいライフスタイル」を伝えるアニキのブランドのサイトがあったっていいんじゃないか……と。

三宅:極論を言えば、俺のブランドの服を着てもらえなくてもかまわないの。サイトを見て、「かっこいい50代」になるためのきっかけを掴んでもらえさえすれば。

種市:そんなアニキの情報発信活動のお手伝いを、及ばずながらお手伝いできれば僕もうれしい。全体的なトーンとしては、アニキのつくる服はシンプルなものが多いので、僕のプラマイゼロ理論で言えばスパイス、ブレンドしやすいわけだし……。あ、簡単だけどカッコイイな、コレでいいんだ……って感じに。

三宅:本来の俺は「引き算」が苦手なので……(笑)。でも、50代になったら、「引き算」はどうしても不可欠になってくる。俺に盛る癖があるから、『A BLENDS』はあえて「削ぐ」を意識したラインナップになっているんです。だから、種サンの助言は本当に助かる!

──三宅さんの現在の引き算信仰は種市さんの影響もかなりある?

三宅:そりゃあ、ありますね。OCEANSは言ってもファッション誌だから、どのモデルさんもキチンとコーディネイトされている、盛られているの。しかし、種サンは同じ誌上であえて「引いて」いる。だから、俺も「ほう…なるほどね」と、つい読んじゃうわけです。
とにかく余計なことはしない。でも、色はわりと使うの。それが絶妙!

種市:OCEANSっていうのは、公称の対象年齢が37.5歳なんですよ。なのに、50歳過ぎたアニキがメインモデルとして活躍していたりして……。たぶん僕も含めて、これが「アンチエイジング」ならぬ「エイジング」の“答え合わせ”になっているんじゃないかと思う。

三宅 敬(みやけ たかし)

1967年2月生まれ神奈川県川崎市出身。20歳でモデルデビュー。その後、約3年間アメリカ ニューヨークに留学し、アメリカ西海岸で古着の買い付けなどを経験。 33歳からは約10年にわたりインテリアショップ『モダニカ』にてマネージャーとして務め、 ミッドセンチュリー家具の造詣を深めた。 現在は事務所兼ショップ『58』にて、読谷山焼「北窯」の製品を販売。そのほかに自身のリメイクブランド「サードハンズ」をデザイン。2019年1月18日より、自身がクリエイティブディレクターとして立ち上げるブランド『A blends』を、満を持して展開する。

種市 暁(たねいち あきら)

1972年10月生まれ東京都出身。BEAMS (B印吉田・ビームスプラネッツ)ディレクター職などを約20年間務め、独立。現在はフリープランナー(ディレクション・コンサルティング・スタイリング・モデル・コラムニスト)として、肩書きに囚われず日本のファッションシーンを牽引する。趣味は、旅・波乗り・愛犬と散歩。