「シブいおじさん」が必ずしも

「セクシーなおじさん」だとはかぎらない!

コラムニスト 山田ゴメス

「セクシーなおじさん」の「セクシー」の正体は、すでに50代後半へと差しかかり、まもなく還暦を迎える私をはじめとするシニア世代の男にとって、永遠のテーマである。
「シブい」「ダンディ」「ちょいワル」……etc、おじさんを持ち上げる形容はいくつかあれど、それらすべてが「=セクシー」に直結するわけではない。いくら「シブい」「ダンディ」「ちょいワル」……とおだてられても、たとえばデートに誘った女性に「今日はこんな美味しいご飯をご馳走になって、ありがとうございます(ハートマーク)」と食い逃げされたら、それは単なる「都合のいいおっさん」でしかないからだ。
「セクシーなおじさん」とは、“そこからあと”を(実際に“それ”があるかどうかは抜きにして)女性に想起させるだけの磁力、フェロモンを秘めるおじさんのことを指すのではないか。もう一度繰り返す。シブくてダンディな「ちょいワルオヤジ」が必ずしも「セクシー」だとはかぎらないのである。

ならば、「シブい」でもなく「ダンディ」でもなく「ちょいワル」でもなく、「セクシー」だと周囲から称される男とは、はたしてどんなおじさんのことを指すのだろう?
私は、これは案外シンプルな理屈で、「定期的になんらかのスポーツをやって、ちゃんと身体を動かしていること」を、一つに挙げておきたい。「若々しい身体をつくる」というアンチエイジングをゴールとし、せっせとジム通いするおじさんのことではない。野球で、テニスで、フルマラソンで、サーフィンで……持ちうる身体能力を最大限に活かして最高のパフォーマンスを発揮するがため、必然として盛り上がったりシェイプされたシルエット──これぞ「セクシー」だと私は考える。
あと、一見だと「シブい」や「ダンディ」や「ちょいワル」とは真逆の概念として捉えられ兼ねない「可愛い」こそが、「セクシーなおじさん」にほぼイコールする資質なのではないか……とも、私は思う。
ただ、ひと言で「可愛い」と言っても、四十路や五十路をとうに超えたおじさんが、それをナチュラルなかたちで演じるのも、なかなかにむずかしい。当然のこと、ニュアンスをほんのちょっと誤っただけで、たちまち「キモいおじさん」へと成り下がってしまう。

つい最近、こんなことがあった。
午前0時をとうにまわった真夜中──私がとある20代の女性と一緒に自宅で過ごしていたとき、トイレの水がタンクで詰まって流れなくなった。そういうとき、私みたいなおじさんは「一刻も早くクラシアンに電話しなきゃ」「ポストにあるクラシアンのマグネット掲示板を取りに行かなきゃ」……と慌てふためいたりする。ところが! そのとある20代の女性は、スマホに「トイレ 水詰まり タンク」のワードを入力し、トイレのタンクにガッと手をブチ込んで、ものの数分で修理を終えてしまった。
「なんて頼りがいがある子なんだ…」と感動した。そう。「おじさんの可愛さ」とは、相手が女性であれ、娘ほどの年の差であれ、その人が本当に為になることを提案もしくは提示してくれたら、それを心底からリスペクトしつつ、全面的に受け入れる姿勢、実直でリベラルな精神性にある。「加齢によって得た豊富な経験」が「シブい」の土台となる一要素と解釈するならば、むしろ、その「シブさ」を時にはあっさりと切り捨てる勇気こそが「可愛いおじさん」、あらゆる関係性においてリアリティ、ある種のデンジャラスな香りを漂わせるおじさん、決してカモにはならないおじさんを志すには不可欠な条件なのだ。

ファッション一つ取っても、この定則は例外なく該当する。「アダルトの余裕」らしき、表現を変えれば「上から目線」を、これでもかと見せつけるような、頭からつま先まで有名高級アイテムで完全武装したギラギラのコーデなんて、いらない。いいモノはいい、ダメなモノはダメと、価格やブランドネーム、一般論で語る「年相応」……ほかの先入観に囚われることなく、自身で磨き上げてきたセンス、感性のみを信じてオシャレを、エイジレスで淀みなく楽しむことができるおじさんこそが「可愛い」、ひいては「セクシー」なのではなかろうか。

山田 ゴメス(やまだ ごめす)

フリーランスライター兼イラストレーター。1962年大阪府生まれ。関西大学経済学部卒。守備範囲はエロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、さらには漫画原作までと幅広く、かつては男性総合情報誌『Hot-Dog PRESS』(講談社)の恋愛・SEXマニュアルも担当していた。自身のキャッチフレーズは「永遠の思春期」。また「百の恋愛には百の戦略がある」をモットーとし、「いまだ現役」の実体験から得た千差万別のデータに基づいたリアルなLOVEテクニックは他の追随を許さないが、自分の色恋沙汰になると案外ポンコツな一面も時折かいま見せる。草野球をこよなく愛し年間80試合以上に出場。2019年の2月上旬に『モテと非モテの脳科学〜おじさんの恋心はなぜ報われないのか〜』(菅原道仁・共著)をワニブックスPLUS新書より出版。同年1月から電話やメッセージで恋愛相談に応じる『Lovers相談室』(https://renai.life)の相談員に就任